コストリーダーシップ戦略を作成する方法(中小企業でもコストリーダーになれるかも!?)

今回はマイケルポーター氏が提唱している「競争優位の戦略」の1つのコストリーダーシップ戦略について紹介しています。

「自社製品のコストを下げ利益率を上げたい」

「他社に対して優位性を確立したい」

「差別化戦略とは違うマーケティング施策を行いたい」

このようなお悩みの方に有益な情報をお伝えしています。

コストリーダーシップ戦略と聞くと、『大企業が行う安売り戦略では?」と言われることもありますが、全く異なる戦略です。

コストリーダーシップ戦略は大企業だけのための戦略ではなく、多くの中小企業も採用しています。自社のマーケティング施策について迷われている方は、本記事にて正しいコストリーダーシップについて学び、自社の戦略に生かしてみましょう。

コストリーダーシップ戦略とは

コストリーダーシップ戦略は、競合他社よりも低価格で商品を販売する、または、商品の原価を抑えて自社の利益率を増大させる戦略です。主に価格が重要な要素である市場で向いている戦略といえます。

コストリーダーシップ戦略の基本的な目標は、高品質の原材料を最低価格で入手することです。さらに、これらの原材料を消費者にとって価値のある商品に変換する質の高い労働力が必要となります。

コストリーダーシップ戦略と安売りの違い

コストリーダーシップ戦略は、安売りと似ていますが異なる戦略となります。

安売りはあくまで、利益を無視し、自社商品の価格を下げ販売するだけです。コストリーダーシップ戦略は、商品原価を下げるシステムを構築した上で、価格を下げるだけでなく利益を重視した戦略ということを理解しましょう。

コストリーダーシップ戦略のメリット

コストリーダーシップ戦略のメリットについて紹介します。

メリットを理解した上で自社に向いている戦略か判断してみましょう。

【メリット①】自社が選択される可能性が増える

コストリーダーシップ戦略を行うことで、自社が選択される可能性が増えます。

ユーザーの中では、価格を重視して商品を購入する方が多いためです。そもそも価格が高ければユーザーの選択肢にすら入らないケースもあるが、低価格にすることで自社が選択されるケースは非常に多くなると言えるでしょう。

【メリット②】多くの利益が獲得できる

コストリーダーシップ戦略を行うと、多くの利益を獲得することが可能です。

70円仕入れの商品を100円で販売していたとして、仕入れコストを60円にできれば、全体の利益率は10%も向上します。

コストリーダーシップ戦略のデメリット

コストリーダーシップ戦略のデメリットについても紹介します。

【デメリット①】過度な価格競争の可能性

コストリーダーシップ戦略を行うことによって、価格競争が過度になる可能性があります。

各競合他社が値段をどんどん下げることにより、価格競争が止まらず、市場価格が低下するとコストを抑えて仕入れているのにも関わらず、全く利益が取れない状況になるケースも考えられます。

【デメリット②】多額のコストが掛かる

コストリーダーシップ戦略には、多額のコストが掛かります。商品原価を下げるためのシステム構築は簡単にはできません。

例えば、自社独自で生産システムを構築する、大量仕入れでコストを削減する、どちらも多額の費用がかかります。

コストリーダーになるための5つの方法

コストリーダーになるには、下記5つの方法があります。自社にとって最適な方法を選択するようにしましょう。

【コストリーダーになる方法①】生産規模の拡大

コストリーダーになるための1つ目の方法は、生産規模の拡大です。この方法は、価格が重要な要素である市場で特に有効です。

例えば、企業が必要な量だけでなく、大量の仕入れをした場合、商品1つあたりの仕入れ価格が下がり、商品コストを削減できます。また、サプライヤーに対してより強力になれるといったメリットもあります。

【コストリーダーになる方法②】高度なテクノロジーの実装

コストリーダーになるための2つ目の方法は、革新的なテクノロジーを実装または投資することです。革新的なテクノロジー実装により、1時間あたりに多くの製品を製造できるようになれば、コストを削減できます。

例えば、自社で革新的なテクノロジーを作成すれば、生産に必要な従業員数の制限や、独自の技術の特許を取得し、後で販売してより多くの収益を生み出すことも可能です。

【コストリーダーになる方法③】原材料の調達

コストリーダーになるための3つ目の方法は、原材料の調達です。

サプライヤーも利益を上げるために、製造プロセスの原材料が高額になる可能性があります。自社で原材料を調達し、サードパーティ製品への依存を減らすことで、運用コストを削減できます。

また、材料を直接調達することで他の企業に供給することもでき、別の収入源として他のメーカーに再販することも可能です。

【コストリーダーになる方法④】効率の改善

コストリーダーになるための4つ目の方法は、効率の改善です。効率の向上は、企業の運用コストの節約につながります。

例えば、縫製工場で1日に100枚の布おむつを生産しているとしましょう。工場の運営、スタッフへの支払いなどの費用は1日30万円です。

効率の改善をはかるために、1枚の布からおむつを生産するのではなく、複数枚の布からおむつを作成するバルクカットを取り入れることにより、1日200枚の布おむつを35万円の費用で製造できる可能性があります。

効率を改善してコストを削減する方法は、従業員を減らすことだけではありません。生産量を上げながら運用に掛かるコストを減らしていくことが重要となります。

【コストリーダーになる方法⑤】製品とサービスの制限

コストリーダーになるための5つ目の方法は、企業が自社の製品とサービスを制限することです。

製造および販売する製品を少なくし、収益性の高い製品またはサービスにより多くの努力を集中することができます。これにより、企業は事業を拡大し、原材料やその他の供給品のコストを最小限に抑えることが容易になります。

コストリーダーシップ戦略を作成する方法

コストリーダーシップ戦略を作成するには、下記4つの工程を行います。

【工程①】組織の既存の業務を評価

まず、組織の既存の業務を評価します。会社が購入する『すべての材料の正確なコスト』『商品やサービスの生産にかかる労力』『管理費』『ソフトウェア』についてのコストを明確にします。商品価格を決める場合、材料コストや人件費だけではなく、見落としがちな『管理費』『ソフトウェア』などのコストも考慮した販売価格にする必要があります。

【工程②】競合他社を調査

次に、競合他社を徹底的に調査します。企業は、競合他社を特定できるように、他のビジネスのプロセスとコストについて知る必要があります。

競合他社の業務を評価することは、たとえコストリーダーにならなくても、自社コストやプロセスを改善するのに役立ちます。

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【工程③】コストを削減するための戦略を特定

次に、コストを削減するための戦略を特定します。先ほど紹介した、コストリーダーになるための5つの方法を参考にし、自社に合ったものを選定しましょう。

例えば、自社でレストラン運営しており、業務評価と競合調査で、自社のコスト削減課題が『人件費』であると分かりました。人件費を削減するために、タッチスクリーン注文や自動会計システムの実装を一部店舗で始めることにより、人件費の削減の課題がクリアとなります。

【工程④】進捗状況を追跡

最後は、進捗状況を追跡します。コストリーダーシップ戦略には進捗状況の測定が必須となります。

多くのコストリーダー企業は、今回紹介した『分析』→『競合他社調査』→『課題を見つける』→『改善策実行』→『進捗状況を測定』の工程を何度も繰り返しています。

コストリーダーシップ戦略の成功事例

実際にコストリーダーシップ戦略を行い成功した事例を紹介します。

【成功事例①】プリマーク

コストリーダーシップ戦略の成功事例1社目は、12か国に370店舗を展開するアイルランドのファストファッションブランド『プリマーク』です。

プリマークは、競合他社を大幅に下回る最低価格を提供しています。プリマークが最低価格を提供するための行ったコストリーダーシップ戦略は下記の通りです。

  • 在庫を全ての店舗でまとめて購入しコストを削減
  • プロモーションは口コミとSNSのみで、広告には一切頼らない
  • 通関手続きと倉庫保管および流通ネットワークを導入し、市場投入までの時間を短縮

プリマークは、これらすべての効率性と運用戦略を行い競争上の優位性を獲得しました。

【成功事例②】ライオンエアー

コストリーダーシップ戦略の成功事例2社目は、アイルランドを拠点とする格安航空会社のライオンエアーです。

ライオンエアーは、可能な限り低単価で空の旅のサービスを提供することにより、競合他社を凌いでいます。ライオンエアーが行ったコストリーダーシップ戦略は下記の通りです。

  • 航空機の種類が少なくすることにより、無駄なくスペアパーツを購入できる
  • 人気のない空港への飛行をすることで、空港手数料の削減
  • 無料の食事、空港ラウンジ、など差別化サービスの排除

ライオンエアーは、可能な限り低い空の旅を提供するために、上記コストリーダーシップ戦略を行いました。

【成功事例②】IKEA

コストリーダーシップ戦略の成功事例3社目は、スウェーデンの家具小売業者IKEAです。

IKEAはコストリーダーシップ戦略で、大きな競争上の優位性を獲得しました。現在、多国籍グループは52か国で433店舗を運営しています。IKEAが行ったコストリーダーシップ戦略は下記の通りです。

  • 顧客が自分で家具を組み立てる必要があるため、低コストで高品質な提供が可能
  • イケアは低賃金の国で製品の製造をアウトソーシングしてコストを削減
  • 従業員に予算を費やしていない

IKEAのコストリーダーシップ戦略は、差別化戦略の要素も踏んでいます。顧客が自分で家具を組み立てることにより、愛着が湧き多くのユーザーがファンとなっています。IKEAは全く新しい革新的なビジネスモデル発明したともいえるでしょう。

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【まとめ】コストリーダーシップ戦略を作成する方法(中小企業でもコストリーダーになれるかも!?)

コストリーダーシップ戦略を作成する方法について紹介しました。ポイントは下記の通りです。

  • コストリーダーシップ戦略は、原価を下げるシステムを構築して価格を下げる戦略
  • コストリーダーシップ戦略を行うと、自社商品が選択されやすくなり利益も上がる
  • 過度な価格競争に巻き込まれやすくなり、多額のコストがかかるデメリットもある
  • コストリーダーになるには、『生産規模の拡大 』『テクノロジーの実装』『原材料の調達』『効率の改善』『製品とサービスの制限』のいずれかの方法がある
  • コストリーダーシップ戦略の作成方法は『分析』→『競合他社調査』→『課題を見つける』→『改善策実行』→『進捗状況を測定』の工程を何度も繰り返す。

本記事を参考にして、自社でも最適なコストリーダーシップ戦略を行いましょう。

コストリーダーシップ戦略を作成する方法(中小企業でもコストリーダーになれるかも!?)
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