今回はランチェスター戦略について紹介をします。
「大手企業に勝つための戦略が知りたい」
「シェアNo.1を獲得するための戦略が知りたい」
「シェアNo.1をキープする戦略が知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方に有益な情報を公開しています。
ランチェスター戦略とは、第一次世界大戦の際に提唱された戦争理論を経営理論に落とし込んだものです。
中小企業が大手企業に勝つために用いられることが多い戦略ですが、一口にランチェスター戦略といってもさまざまな戦略があり、具体的に理解をしないと効果は見込めません。
本記事では、具体的なランチェスター戦略について紹介をしていますので是非、参考にし、自社の経営に役立ててください。
ランチェスター戦略とは
ランチェスター戦略とは、イギリスの航空工学研究社のランチェスターが第一次世界大戦時に提唱した戦争理論です。この戦争理論を経営にも応用したもので日本では、ランチェスター理論を用いた経営理論が多く存在します。企業を強者と弱者に分けて、それぞれがどのよう戦えば良いかといった理論です。
ランチェスター戦略で述べられるのは、同じ武器(商材・サービス)であれば兵力数で勝負が決まるということです。
ランチェスター戦略には、2つの法則がありますので紹介します。
第一法則(弱者の戦略)
ランチェスター戦略の第一の法則は、弱者のための戦略です。
一騎打ちや接近戦をイメージすると分かりやすいでしょう。計算式は下記の通りです。
- 武器効率×兵力数=戦闘力
例えば、同じ武器を使った場合、単純に兵力の数で戦闘力が決まるということです。
- 武器効率×兵力が5=戦闘力
- 武器効率×兵力が10=戦闘力
同じ武器を使っていても②の方が兵力が多いため、②の戦闘力が高いということです。
①が②のような大企業に勝つ場合は、武器の効率を上げるか、兵力を増やすなどの策をしないと勝つことできないということです。
第二法則
ランチェスター戦略の第二の法則は、強者のための戦略です。
銃などの近代武器を使用する遠距離戦をイメージすると分かりやすいでしょう。
第一法則との違いは、兵力数が二乗になるということです。計算式は下記の通りです。
- 武器効率×兵力数の二乗=戦闘力
こういった銃などを使った確率戦の場合は、兵力によって戦闘力差が第一法則よりも大きくなります。
兵力が少ない企業は、第二法則では大企業に勝ち目がないので、強者のための戦略となるということです。
強者と弱者の定義
ランチェスター戦略で定義される強者と弱者の定義は、いたってシンプルです。
- 強者=市場占有率1位
- 弱者=市場占有率が2位以下
上記のようになります。多くの企業が弱者となるので、先ほど紹介した第一法則を使って強者(大企業)と戦っていく必要があります。
ランチェスター戦略とマーケットシェア理論の関係性
弱者がこれから強者と戦うためには、シェアの目標値を設定する必要があります。100%シェアを狙えばいいのでは?と思うかもしれませんが、100%を狙うと市場が硬直し、企業やユーザーにとって良い結果を生まれないとも言われています。
シェアの目標値についてまとめましたので、参考にして下さい。
シェア率 | 目標値 | 詳細 |
---|---|---|
73.9% | 上限目標値 | 絶対的に安全なシェア率、これ以上のシェア率があると市場が硬直する可能性がある |
41.7% | 安定目標値 | 多くの企業が目標値している安定が見込めるシェア率 |
26.1% | 下限目標値 | このシェア率を下回ると強者であっても安定しない |
19.3% | 上位目標値 | 弱者の中でトップのシェア率 |
10.9% | 影響目標値 | 市場に影響を与えはじめるシェア率 |
6.8% | 存在目標値 | 他社に認識されるが、市場に影響は与えないシェア率 |
2.8% | 拠点目標値 | 市場における存在価値は少ないが、足がかりになりうるシェア率 |
シェアの目標値は市場撤退の目安にもある
自社が目標を設定するために、シェアの目標値を紹介しましたが、シェアの目標値は市場を撤退する目安としても有効です。6.8%の存在目標値を1つの見極めとしている企業が多いです。
ただ、2.8%の拠点目標値でも対策があれば、返り咲ける可能性もあるので、一概に何%で撤退した方が良いとは言えません。企業ごとに最低ラインを事前に設定しておくことが重要です。
弱者が取るべきランチェスター戦略とは
弱者が取るべきランチェスター戦略を具体的に紹介します。
弱者の基本の戦略としては、差別化を図ったりターゲットを絞ったりなどの戦略が基本になります。
接近戦
接近戦とは、顧客に近づいてビジネスを行うランチェスター戦略です。顧客に触れ合う機会を増やすという戦略になります。地域密着などで商売している企業はこれに当てはまります。
接近戦の成功事例
接近戦で成功した企業が、外科手術用の縫合針国内シェア70%を占めるマニー株式会社です。マニー株式会社は、錆びにくい素材を使った縫合針を開発し、商品力で勝負をしましたが当時無名だったため、認知がされませんでした。
医療器販売のルートは、「メーカー」→「問屋・代理店」→「地域の医療ディーラー」→「病院」のルートが基本ですが、問屋・代理店にも扱ってもらえないという状況が続きました。そこでマニーがとった戦略は、有名な外科医の先生に直接商品をアプローチするといった接近戦です。有名な先生に商品の評価をしてもらい、商品が認知され、国内トップのシェアを獲得しました。
一点集中戦
一点集中戦とは、攻撃目標をひとつに絞り、重点的に攻める戦略です。攻撃目標を「エリア」「顧客」「商品」に小さく絞っていきます。簡単にいうとターゲットを絞るということです。
一点集中戦の成功事例
一点集中戦で成功した企業がコンビニエンスストアのセブンイレブンです。
セブンイレブンは一斉に全国展開をしたわけではなく、出店するエリアを絞り集中的に出店を重ねて認知度を上げていき、最終的には、出店をまだしていない地域からも出店を望む声が上がる状態を作りだすという、一点集中型のランチェスター戦略を行い全国展開を成功させました。
陽動戦
陽動戦とは、強者へ奇襲をかける戦略です。強者がやらないような戦略をあえてつかってユーザーにアプローチをしていきます。
陽動戦の成功事例
陽動戦で成功した企業はビックカメラです。
今でこそ全国区のビックカメラですが、東京池袋に初進出した1970年は弱者で認知度もほとんどありませんでした。家電量販店の多くがテレビCMなどの広告を行うなか、ビックカメラは同じことはせずに、店舗から1時間圏内の集合住宅地に従業員がひたすらポスティングを行いました。強者ではまずやらないであろう非効率な戦略です。それが功を奏し顧客を増やしていき全国区の家電量販店に上りつめました。
一騎打ち戦
一騎打ち戦とは、競合他社が1社しかいない、ニッチな市場に参入する戦略です。
できるだけ競合が少ない市場の方がシェアを取りやすいといったシンプルな戦略です。
強者のランチェスター戦略とは
強者のランチェスター戦略は、資金源などをフルに生かした戦略が特徴です。
確率戦
確率戦とは弱者の一騎打ち戦に対して行う戦略です。弱者を数で抑え込み弱者が参入する隙を与えないということです。
メーカーであれば、類似の商品のアイテム数を増やし、自社の製品同士を競争させることによって、一騎打ち戦で参入してきた企業の商品を選ぶ確率をどんどん下げていくといった戦略になります。
遠隔戦
遠隔戦とは、弱者の接近戦に対して行う戦略です。先ほど接近戦で紹介したマニー株式会社は、外科医の先生に直接アプローチをするといった戦略でしたが、認知度や資金がある企業は、その逆で問屋や卸をフル活用し商品を販売していくといった戦略になります。
総合戦
総合戦とは、圧倒的な数や量で市場を独占する戦い方です。
広告を使った大量の宣伝や商品のラインナップの充実などが上げられます。強者の場合は、弱者と違って絞り込む必要がないので、資金をどんどんかけ総合力で勝負をするといった戦略になります。
誘導作戦
誘導作戦とは、強者が弱者を自分の市場に誘い込み弱者を潰すといった戦略です。大企業の場合価格による誘導作戦を仕掛けるケースがあります。
例えば、大企業A社が1000円である商品を販売しており、中小企業のB社が同等商品を900円で販売し、A社に勝負を仕掛けます。それを認識したA社は1000円→800円に価格を下げます。通常の価格競争であれば体力がある大企業が勝ち残るといった戦略です。
【まとめ】ランチェスター戦略とは?弱者と強者の戦い方を解説
ランチェスターとは、弱者や強者のための経営の戦略です。紹介した戦略はそれぞれ対の関係になっています。
- 強者の「遠隔戦」:弱者の「接近戦」
- 強者の「総合戦」:弱者の「一点集中戦」
- 強者の「確率戦」:弱者の「一騎討ち戦」
- 強者の「誘導戦」:弱者の「陽動戦」
自社に合った戦略を選び、試行錯誤しシェア獲得を目指してみましょう。